本学では、昨年10月より外部講師をお招きして、サイエンスカフェを開催しています。
サイエンスカフェとは、従来の講演会・シンポジウムとは異なり科学の専門家と一般の人々が、喫茶店など身近な場所でコーヒーを飲みながら、科学について気軽に語り合う場をつくろう!というイギリス発祥の試みです。
環境学部環境学科 足利裕人教授がファシリテーターとなって、まちなかキャンパスで行われた各回の様子をお伝えします。
第1回
日時:10/16(日) 13:00~15:00
タイトル:「中学理科でわかるニセ科学」
ゲスト:小波秀雄氏 京都女子大学名誉教授
参加者:17名
最初に、クイズ形式で、学校と住民運動に入り込んだ、元々農業資材として開発されたニセ科学商品の説明がありました。加えて、「ニセ科学を判断するのに大事なことは、つじつまを合わせる論理力です。これが本当なら?と背理法で考えてみましょう」。「効能が事実なら、それは爆発的に売れ、みんなが助かっているはず。しかしそんなことは起きていない。」「万能と主張するものはニセ科学」と解説されました。
続いて、広告を題材に行間を読んではいけないことについて説明がありました。書かれていないことをかってに消費者が(自分の都合に良いように)想像してしまう。この「行間を読む」という行動は、あいまいな文章から書かれていないことを想像力で補って読むことでもあり、広告を読むときには注意が必要であることを説明されました。
ニセ医学について、医学に関しては免疫性疾患の研究は進んでいるが、医療にはなかなか結び付かず、精神疾患は種類によってまちまちであること。ニセ医学は、まだ治すのが難しい病気につけこんでくることが常であり、病気で医療を受けるときに大切なことは、標準医療であることの確認と病気になったら標準治療を説明してくれる医師を選ぶことの必要性について説明されました。
最後に小波名誉教授のギター演奏で自作の「信じちゃいけないの唄」が披露されました。
小波先生がギターを抱えて説明されました。
第2回
日時:11月20日(日)13:00~15:00
タイトル:「アレルギーを引き起こす新しい細胞の発見」
ゲスト:茂呂 和世氏 理化学研究所統合生命医科学研究センター 自然免疫システム研究チーム 兼 横浜市立大学生命医科学研究科免疫生物学研究室 客員教授
参加者:16名
最初に、日本最大で唯一の自然科学の総合研究所である理化学研究所統合生命医科学研究センターについて紹介があり、現在、茂呂氏の率いるチームがILC2(茂呂氏の研究チームが発見した2型自然リンパ球)によるアレルギーの発症メカニズムを明らかにすることで、アレルギーの新しい治療法開発を目指していることの説明がありました。
続いて、リンパ球と免疫の関係からアレルギーが起こるメカニズムや、寄生虫に関することについて説明がありました。
アレルギーは3人にひとりが持っており、アレルギー・マーチはアトピー素因を持った人に起こること、出生から成人になるにつれて、食物アレルギーがあるとアトピー性皮膚炎になりやすく、小児喘息、アレルギー性鼻炎から成人型喘息へと進んでいくこと、アレルギーは年々増えている病気であり、細菌感染に弱い人はアレルギーにかかりやすく、細菌感染に強い人はアレルギーが少ないことなどについても解説されました。
さらに、肥満や喘息などについて、ILC2を正常値にすることによる治療をめざしているとの説明があり、最後に、日常生活で役立つ傷口の応急措置方法や、体を洗うことについてもわかりやすく解説されました。
茂呂先生が参加者の質問に答えています。
第3回
日時:12月10日(土)13:00~15:00
タイトル:「紫外線がいつから生命の敵になったか?」
ゲスト:中川 和道氏 神戸大学 名誉教授
参加者:16名
最初に、皮膚ガンをひきおこす原因として嫌われる紫外線が、生命が最初につくられるために必要なエネルギーであったことの説明があり、身近な例として、トマト、きゅうり、イチゴなどが市場で紫外線を当てて色づき調整されていることや、歯科治療での紫外線硬化樹脂の活用、爬虫類の紫外線ランプの利用等のほか、紫外線をカットすると、モンシロチョウは交尾できなくなることなどが紹介されました。さらに、宇宙ステーションで行われている紫外線実験についても説明がありました。
次に、オゾン層破壊と人への紫外線の影響である皮膚老化、色素沈着、皮膚がん、白内障などについて説明があり、2010年±15年は、人類がここ数万年体験したことのないオゾン層の減った時代であるが、オゾン層破壊の原因となるフロンを追放する運動について解説がありました。
中川先生が参加者の質問に答えています。
それぞれの講座に参加された方々は、興味深く聞き、質問も多く出ました。
次回第4回は、1月22日(日)13:00からまちなかキャンパスにおいて、ゲストに北野貴久氏(神戸村野工業高等学校教諭)をお招きし、「楽しい科学マジックの創り方」をテーマに開催いたします。
たくさんのご参加をお待ちしています。