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TUESレポート

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中国科学技術史学会での招聘講演(浅川教授)

中華人民共和国建国70周年記念建築史シンポジウム(中国建築学会)での講演を終えた1週間後にあたる11月16日(土)、浅川滋男教授(本学環境学部)は中国科学技術史学会建築史専業委員会主催の国際シンポジウム「木造営造技術の研究」で「科学的年代測定と建築史研究」と題する招聘講演をおこないました。会場は福州大学(福建省)、今回も中国語での発表です。講演の正式題目と構成は以下のとおりです。

 

科学的年代測定と建築史研究-日本の木造建築部材とブータンの版築壁跡の分析から-
1.建築年代と科学的年代測定
2.米子八幡神社の蟇股・神像の年代
3.ブータン仏教本堂の成立時期を探る
4.おわりに

 

歴史的建造物の年代は従来、建造物の様式分析と棟札などの文献史料から検討されてきましたが、近年は木造建築部材の科学的年代測定を積極的に導入するようになってきています。科学的年代測定には、①放射性炭素年代測定、②年輪幅の変動による年輪年代測定、③酸素同位体比年輪年代測定の3種が知られています。いずれも精度を高めていますが、それぞれ一長一短があり、できれば2種以上の測定によって年代をクロスチェックするのがよいとされています。浅川教授は、出雲大社境内遺跡(島根県)出土柱材などの考古系木材で科学的年代測定結果の相互チェックをした上で、鳥取市の大雲院本堂内陣柱・摩尼寺本堂小屋梁、米子市の八幡神社蟇股などの測定年代結果を棟札・様式と対照し、より正確な年代を特定するための方法を披露しました。さらに、ブータンで取り組んでいる版築壁内有機物の放射性炭素年代測定により、本堂の成立時期が国家形成期(17世紀前半)以前に遡る可能性が高いことを示しました。中国側の建築史研究では、未だ科学的年代測定を導入することはほとんどなく、木造部材や壁内有機物の年代測定法に注目が集まりました。発表後には客家土楼(世界遺産)の年代特定に協力してほしいなどの依頼が相次いだそうです。

 

 

 

関連リンク先

中華人民共和国建国70周年記念 建築史シンポジウムでの招聘講演(浅川教授)

浅川研究室ブログ:

建国七十周年の新中国(三)

科学的年代測定と建築史研究(1)

科学的年代測定と建築史研究(2)

科学的年代測定と建築史研究(3)

 

会場前での記念撮影(福州大学)会場前での記念撮影(福州大学)
講演開始講演開始

 

摩尼寺本堂小屋梁酸素同位体年輪年代測定摩尼寺本堂小屋梁酸素同位体年輪年代測定
ブータン版築壁跡からのサンプル採取ブータン版築壁跡からのサンプル採取