10月4日(火)、県民ふれあい会館会議室で「ウクライナ避難民の支援と人類社会の未来像(中間報告)」が開催され、120名の聴衆とメディアで溢れました。この講演会は、令和4年度公立鳥取環境大学学長裁量経費特別助成を受け、本学サステイナビリティ研究所が主催したものです。
講演会は、本学サステイナビリティ研究所 田島 正喜 所長による開会挨拶から始まりました。
第1部では、本学環境学部 浅川 滋男 教授が「避難民の『居場所』を読み解く-過疎地を前向きにとらえるために(中間報告)」と題する講演会をおこないました。浅川教授は、「避難民の居場所を再考」すべく、在留ウクライナ避難民の大都市圏集中傾向が強いことを示しつつ、まずは出雲に避難している4名のロシア人の取り組みから紹介がありました。4名のうち1名がモスクワで反戦デモに参加した懲罰として最前線に派兵される可能性が高まり、彼らを雇用する日系企業のCEOが日本に出国させ、知人のつてを頼って、島根県出雲市へ避難させました。かれらはIT技術者の特性を活かし、田舎暮らしをしながら、ウクライナ避難民支援のサイト「ドポモーガ(援助)」を運営しています。続いて、彦根・北陸に避難中のウクライナ人に直接インタビューし、田舎暮らしの理由を問うたところ、「なにより危険な場所から逃げたくて、身元保証人がいたのが地方だった」という実態を明らかにします。かれらの多くは学校で日本語を学んでおり、修学後は都市圏に出たいという意向をもっています。
第2部では、本学環境学部 角野 貴信 准教授とともに本学が研究員として受け入れているユリア・メドベージェワさんが登壇しました。
(ユリアさんの受入れについてはこちら)
「1986年のチョルノービリ事故による環境影響~ウクライナ生態学・自然資源省のデータから~」と題し、ウクライナにおける放射能汚染の現状やハルキウ周辺地域での調査内容について発表がありました。事故から30数年が経過した今も放射能の影響は残っており、北部地域における現在の被害の80~95%が食物経由での内部被爆であることなどが伝えられました。その中で、ユリアさんは、「日本も福島で原発事故が起きた。ウクライナと日本は互いの科学的知見を交換できれば」と述べました。
最後は質疑応答です。上記3名ほか以下の3名が登壇しました。
マリーナ・ピロゴバさん (ウクライナ出身、北条ワイン醸造所)
ボリス・アファナセフさん(ロシア出身、SAMI JAPAN出雲)
キリル・サプラノフさん(同上)
マリーナさんからブドウの栽培や醸造は大変だが、鳥取県で充実した日々を過ごせていること、ボリスさんからは島根県での暮らしは大都市に比べてストレスが少なく静かな日々を過ごせていること、ユリアさんからは鳥取県は自然豊かな県で、物価水準はウクライナと大差なく、快適に過ごせていることなどの感想が語られました。また、放送大学生涯学習センターの田中久隆所長から「ユリアさんの研究は人類社会の未来に関わる深い研究であり、今後の展開を期待している」という激励のコメントがありました。
その後、本学サステイナビリティ研究所 佐藤 彩子 副所長がこの日の議論を総括し、講演会を締めくくりました。
当講演会で得られた成果も踏まえながら、本学は今後もSDGs教育と研究、社会貢献に邁進してまいります。