本学は、鳥取商工会議所工業部会とのSDGs連携事業(※)に取り組んでいます。この度、令和5年度の事業総括として進捗状況及び成果等を広く共有するために令和6年2月20日(火)に「令和5年度公立鳥取環境大学とのSDGs連携事業報告会」を鳥取商工会議所で開催しました。
(※)
SDGs連携事業では、SDGsの取り組み推進を目的に工業部会と本学の教員及び学生が連携し、企業の環境分野等における課題を解決します。本年度は3社の課題解決に取り組みました。そして、課題解決を通じて、本学ではSDGsの目標達成並びに学生の成長を目指します。なお、この連携事業は、本学におけるSDGs推進組織であるサステイナビリティ研究所が主導して進めています。
報告会では、まず、鳥取商工会議所 児嶋祥悟 会頭から、次に本学の江﨑信芳 学長から挨拶がありました。江﨑 学長は、挨拶のなかで、3月末までの自身の任期についてふれ、6年間の様々な連携・協力に対して感謝の気持ちをあらわしました。続いて、連携事業の趣旨説明が、木下貴啓 工業部会長からありました。その後、学生から、本年度各社の課題解決に取り組んだ内容等の報告がありました。
1社目のマルサンアイ鳥取(株)は、豆乳製造に伴う、おからの排出(年間約8,220トン(毎年増加している))及びその処理(腐りやすい、処理に伴う輸送費がかかる等)が課題でした。その課題に対して、環境学部4年の原田すず さん(環境学部 門木秀幸 准教授のゼミ生)から「おからからのL-乳酸生産を目的とした糖化処理に関する研究」として報告がありました。その報告では、国内で排出されたおからを利用し、L-乳酸(→重合→PLA(バイオプラスチックの1つ))の効率的な生産を目指した酵素糖化法と酸糖化法に関する検討について説明がありました。報告に対して、同社の岩崎充弘 取締役から「おからは80%が水分で腐りやすく、活用が難しい。それをバイオプラスチックにかえることは素晴らしい。」等のコメントがありました。続いて、門木 准教授から「失敗続きのなか、1つの問題をクリアすると次の問題が発生した。そのような大変な状況のなか最後は上手くやってもらえた。」と原田さんの努力に対して称賛がありました。
2社目の菌興椎茸協同組合は、原木しいたけ栽培用の椎茸種菌を複数まとめてシート状にしたもの(種菌シート)を製造・販売していますが、種菌のフタに発泡スチロールを使っており、栽培後に、その発泡スチロールが、ゴミとして残ってしまうことが課題でした。その課題に対して、環境経営研究科環境学専攻修士課程1年の銅山裕之さん(環境学部 金相烈 教授のゼミ生)から「しいたけ形成菌フタ材の代替に用いる生分解性ゴムの開発と評価」として報告がありました。その報告では、種菌の利点は残しながら、発泡スチロールの代わりとなり、自然環境で分解する生分解性ゴムのフタを作成することについて説明がありました。続いて、同課題に対して、環境学部4年生の吉田拓樹さん(門木 ゼミ生)から「椎茸原木栽培の種菌保護蓋への利用を目的とした発泡PLAの改質に関する研究」として報告がありました。その報告では、植物由来のプラスチック素材発砲PLAを改質させ、平坦で千切れやすく且つ自然環境で分解させることについて説明がありました。2人の報告に対して、同組合の常田孝一朗 代表理事組合長から「ゴムが蓋材となる発想は思いつかず凄い、研究を続けて欲しい。」「発泡PLAは加工が難しいが、それを解消している。」「引き続き環境大学とタッグを組んで行きたい。」等のコメントがありました。続いて、金 教授から「以前取り組んでいた生分解性プラスチック(キトサン)には課題が多く、途中から発想をかえゴムに辿り着いた。未だ課題はあるが失敗を恐れず頑張って欲しい。」と銅山さんに対して激励の言葉がありました。門木 准教授から「このテーマも失敗が多かった。しかし、その対策を考え、対応はできている。」と吉田拓樹さんに対する評価がありました。
3社目の(株)アサヒメッキでは、メッキ加工や各種金属等の表面処理に使用した水を汚水として下水に排出(1日約100トン)しているが、その水に含まれる油分が原因で、再生水循環システムが正常に稼働せず、下水排水の減量化が行えていないことが課題でした。その課題に対して、環境学部4年の吉田愛実さん(門木 ゼミ生)から「メッキ排水の再利用を目的とした有機物除去に関する研究」として報告がありました。その報告では、中和処理過程での金属イオン及び有機物の除去特性についての検討とフェントン酸化における鉄、過酸化水素添加量の影響と中和処理後のpHの影響についての検討の説明がありました。報告に対して、同社の川見和嘉 技術部長から「1年間の研究で企業では思い付かない発想が出てきている。引き続き、基礎研究・応用研究をお願いしたい。」等のコメントがありました。続いて、門木 准教授から「様々な実験を行い、除去率70%まで持ってきてもらった。今後はコストの問題と向き合って欲しい。」と吉田愛実さんに対して指針を示しました。
最後に、司会者から、このSDGs連携事業は、今後発展的な連携を図って行くことの説明があり、報告会を終えました。